2016年12月20日
12月恒例のスペシャル企画。今年は一昨年に続き、プロデューサーである久保田条実が最近の藤原ナオヒロについて語ります。
待望のアルバムリリースを目指して
──まずは「Beginning」が11/29付Amazonニューリリースランキングで12位にランクイン(売れ筋ランキングでは17位)、おめでとうございます。
久保田:ほんの一瞬でしたけどね(笑)。それよりiTunes Storeでベスト100に入ってほしい。
──そちらのほうが難しい?
久保田:はるかに、はるかに難しいですよ。Amazonはわりとチョロいです。売り上げで言ったら、もう…言いたくもない(笑)。でも、本人は励みにはなったんじゃないですか? 取り敢えず何かしらの結果が見えたんですから…。それに同時期に宇多田ヒカルやらユーミンやら星野源が上位にいる中で、ほんの一瞬でも同じ土俵に立てたのは良い思い出に(笑)。
──この一年は昨年に比べて少しリリースのペースが落ちているような…。
久保田:制作ペース自体は昨年より精力的ですよ。ただ、ベクトルはアルバム制作に向かっているので、シングルのリリースだけで見ればペースが落ちているように見えるかもしれません。
──アルバム制作の進捗状況はいかがですか?
久保田:あー、遅れまくっています(汗)。実は、すでに配信を終了している初期の3部作を録り直したものと、新曲1曲を併せたミニアルバムを先行してリリースする予定で制作を進めていましたが、まだ本人にも言っていないけど、いまその計画も変更するかどうか迷っているところで…。
具体的なことはあまり言えないのですが、そのミニアルバムの内容も含めたフルアルバムとして出すかもしれないし…。
それからギタリストの今井芳継氏とコラボした「NOT A CHANCE!」と最近出した「Beginning」が思いのほか好調なので、そちらのプロモーションをもうちょっと引っ張りたい、というのもあって…。
──いままでは全て配信メディアでのリリースですが、アルバムはCD化されるのでしょうか?
久保田:そのつもりです。ただ、それにも問題があって、今はCDが売れる時代ではないですから、あまり売り上げが期待できないし、かといってプレスを発注するとしたらある程度まとまった枚数を作らなければならないので、在庫をかかえて次に進めない、なんて可能性もあるわけです…。音楽にも「鮮度」というのがあるので、モチベーション的にも何年もそれを引きずるわけにもいかないでしょ? だから、一応、パッケージCDは出すけど、まずはAmazonの「Disk on demand」というサービスを利用してリリースしてみようと思います。
果たして、いまの時代に、今の彼の立ち位置でCDアルバムを出すことに意味があるのかどうか分からないですけど、やっぱりアーティストとしては作品としてCDを残しておきたい、という気持ちはありますから…たとえ売れなくても(笑)。
藤原ナオヒロの素顔
──この2年間、藤原ナオヒロとタッグを組んできて、二人の関係性で何か変わってきたこととかはありますか?
久保田:それはもうたくさんありますよ。良い部分も悪い部分も全てひっくるめて受け止めてきたので…まあ、それはお互い様かもしれないけど(笑)。でも、音楽の師弟関係を越えて、もう親子に近いかも(笑)…生活の心配から社会人としての振る舞いまで、もうイチから全てひっくるめて…。だから音楽だけじゃなく全ての価値観において、良くも悪くも僕の影響は大きいかもしれないですね…。甘やかしている部分もあるし、このままで良いのか、僕もホント分からない(笑)。もしかしたら悪い意味で「共依存」になっているかも…。
──彼自身は、SNSであまりプライベートをさらけ出すこともないので、素顔がよく分からない…といった声もあります。
久保田:うん、ライブもやらないから、なんかバーチャルだよね。ホントに存在するの?みたいな(笑)。実は僕が歌っているんじゃないかと疑っている人もいます(笑)。
──それは狙って?
久保田:別にそういうわけではないんですけど、結果的には今はそれで良かったかも。実はね、彼はかなり屈折しているんですよ、性格が(笑)。ひん曲がってる(笑)。素を出すとみんなひいちゃうかも…(笑)。
──ええっ!
久保田:別に言動が過激だとか、そういうことじゃなくて、なんか屈折している…闇を抱えているというか…。自分自身の中でうまくバランスが取れていないカンジ…。それを「個性」としてウリにするやり方もあったかもしれないけど、僕はキャラを個性として前面に出すやりかたは好きじゃないんです。アーティストなんだから、多少性格がユニークだったり尖っていたとしても、それは別に特別なことじゃない。わざわざそんなことをアイデンティティにするのはカッコ悪いし、1曲、1曲の歌詞の世界観を優先したいので、キャラで先入観を与えるようなことはしたくない…。そのへんはニュートラルでありたいんです。
歌詞の世界観
──そういえば藤原さん自身が書く歌詞が増えてきましたけど…。
久保田:作詞家としての自覚はかなり強烈に芽生えてきたようです。その点に関しては僕にとっても予想以上でした。まだ未発表の歌詞も含めて、かなりたくさん書いていますし、クオリティも上がっています。コツを掴んだというか、自分なりのセオリーみたいなものを掴んだのかもしれない…。実は、僕は彼の歌詞にそれほど期待はしていなかった(笑)。もう少しオリジナリティは欲しいところだけど、現時点では伸びしろを感じるし及第点でいいかな、と。
──それは先が楽しみですね。
久保田:彼の歌詞は、何か強烈なメッセージがあるわけじゃないし、実際に経験したことを書いているわけでもない。ほとんど想像力だけで書いているんです。あ、デビュー曲の「グランドスラム」を除いてね。あれは体験談らしいから(笑)。
あれ以外はあたかもリアルタイムで見て、感じているように書いているけど、まったくのフィクション(笑)。僕はそこに好感を持っています。だって、藤原ナオヒロの実体験なんて、つまんないもんですよ(笑)。そんなものを歌詞にしたってしかたがない。自分の体験をひとつひとつ切り売りしていたらいつかきっと限界がくる…職業アーティストとしては想像力で書けなきゃダメだと、僕は思います。
ただ、恋愛経験だけは一度しっかり経験しておいたほうがいいかも(笑)。そこ、貧弱すぎるし、想像力にも限界が…(笑)。
2017年の藤原ナオヒロ
──来年の活動についてお聞かせください。
久保田:まずは具体的にゴールが見えてきたアルバム制作を優先に進めていきます。その次にライブかな…。この1年、制作中心で気持ちが内側に向いていたので、来年は気持ちを外側に向けた活動をしたいと思います。
(インタビュアー:Anpank 社員1号 / 2016年12月某日)